推し

舞台「改竄・熱海殺人事件(モンテカルロ・イリュージョン)」感想

多和田任益さん主演「改竄・熱海殺人事件(モンテカルロ・イリュージョン)」の東京公演を観に行きました。私は運良く2回観ることができました(千秋楽など使用できなかったチケットもありました)。

今回の舞台は作品自体も、それを取り巻く環境も、終幕の形も、色々な感情があり、私自身も観ることのできない公演があり……かなりナイーブな問題なので感想をまとめるのはどうしようかと考えていましたが、あの日あの時に感じた、書きためていた想いを成仏させるために、今更ですがひっそりと更新します。以下ネタバレを含みます。

先に言っておきますが私は観劇のために2回新宿へ赴きました。それ以降の現在に至るまで、バリバリの健康体です!!!!

初めての熱海

2020年はつかこうへい没後10年であり、つか作品を連続上映する「つかこうへい演劇祭」を開催していた。その第2弾が本作「改竄・熱海殺人事件」。このモンテカルロ・イリュージョンは数ある熱海シリーズの中でも異端の存在であることに加え、演出の中屋敷さんが「改竄」を掲げて伝統ある枠組みに挑んだ話題作。

2つの事件は登場人物それぞれの素性や事情が明らかになるにつれて二転三転しながら進み、解決へ向かう。

前作含めて予備知識なしで観劇したので、そもそも速水刑事って誰?熊田じゃないの?から始まり序盤で置いていかれそうになった。登場人物すら違うのか。4人いてみんな声色が違うから聴いていて楽しかった。わたしは大きな音が苦手なので映画館とか大声・罵声の飛び交う舞台は好みではなかったはずなのに、みんな勢いがありすぎるのに、不思議と恐くなかった。やっぱり顔が良いからかな←

みんな舞台上で水を飲んでいた。あんなに声出して動いてたらそりゃ水分補給が必要だし、4人しかいないゆえにはけることがあまりできないから舞台上で飲むという。木村伝兵衛部長刑事がマイ椅子に座って休憩(?)しながら水を飲んでるところを見て、この芝居に妙なリアルさを感じた。目の前にいるこの人たちは生きていて、全力で演じて、それゆえに喉が乾いて水を飲む。この水分補給も演出なのかな、普通にインターバル中なのかな、と無駄に(?)勘繰ってしまう。

コマジュン出演のアセリ教育を観たときも思ったけど、中屋敷さんのこのマシンガンのように撃ち込んでくる台詞の洪水がクセになる。結局は好みの問題だけど。わたしはこういうの大好きだから……

事前に聞いてはいたけれど、本当に台詞が長い&多い。2時間でどんだけ喋らせるのよ!?ってくらい早口で喋ってた。この流れと台詞が頭に入ってる役者さんって本当にすごい。めっちゃ早口でファーファファファーって台詞が進むから少しでも油断すると置いていかれそうだった。でもわたしは早口で捲したてるお芝居は好みだから楽しかったな。ヒプマイくんとか聴いてても、ゆったりめの曲よりアンセムみたいなバババーッと罵倒を浴びる方が好きだもん。観る側も体力のいる舞台でした。

多和田任益さん

推しが、噂の熱海で、木村伝兵衛部長刑事役で、インタビューでもあんなに熱く語り、期待しないわけがないし面白くないわけがない。推しが強く熱く語る舞台はいつだって絶対に面白かった。

事前にインタビューで、推しは木村伝兵衛部長刑事の数々の発言を「暴言」と表現していたけれど、実際はなんというか、単語とかよりも、そういう思想は普通は口に出さないよね、みたいなことを言っちゃってたね。女は~~とか、オカマは~~とか。しかしこの数々の暴言を聞いて、これが推しの言っていた「口に出していることが本当とは限らない」ということであると感じた。

最初の10分ちょいで汗だくだったし、勢いがありすぎて汗と唾が飛んで、こんなにも美しい飛沫ってある?と思った。飛沫すら美しいって何?神様??

あの衝撃の真っ赤なドレスはスリットが入っていたので、木村伝兵衛部長刑事が暴れるたびに美脚がチラチラ(でもなくガッツリ)見えて、ハイ大興奮でした!!!!!マスクで顔を隠せてよかったです。推しはとにかく脚が長い。女装のときはヒールを履いているもんだから余計に美脚だった。綺麗すぎるだろ……美美美

ダンス良かったな、キレッキレなシーンもあったし、しっぽり踊ってるのも良かったな、と考えてた。本番観てるときは忘れてた←けど振付はスパダリことすいーつにいちゃん、野田裕貴さん。そりゃあ推しとベストマッチですわ。推しの魅力を最大限に引き出す振付をありがとうございます。いつも信頼しています。

ラストは泣いた。最後の「鳥になりたかった」に気付いたときから涙が止まらなくて、オリンピックのアナウンスが響く間中ずっと泣いていたし、木村伝兵衛部長刑事が見ることのなかった栄光を抱いて逝ったのかと思うと苦しくて救われる気持ちになった。

スポンサーリンク

菊池修司さん

速水健作刑事は自身の兄である速水雄一郎の死の真相を追及するために木村伝兵衛部長刑事の元へ来た。

綿密に練られた脚本と、アドリブ(日替わり含む)のコントラストが面白かった。わたしが観た回(かなり前半)で、速水刑事が木村伝兵衛部長刑事を押した拍子にペットボトルの水がこぼれるハプニング(日替わり)があった。水がこぼれたこと自体はさしてハプニングではないれけど、推しととりちゃんがスルーしてくれなくて、しばらくずっと「水がこぼれた」「お前のせいだ」「拭け」と騒がれていたのが爆笑だった。速水刑事はスルーしたがる(というか対応できない)んだけど金太郎が許してくれなくて「対応しろ」とかガンガンアドリブで攻めてた。速水刑事は結局対応できずにお芝居に戻っていったけど、金太郎は「ああいうのは滑って危ないんだよ、拭け!」とずっと言ってた。あれ本当に面白かったなあ。

翌週に観に行ったときは、同じ場面で違うボケをしていたけれど、速水刑事が金太郎のアドリブにしっかり対応していて、成長!????と胸が熱くなった。舞台公演中の成長を目の当たりにして嬉しくなった。これぞ生の舞台を何公演も演じること、同じ作品を何公演も観に行くことの醍醐味。奇しくも、舞台やエンタメを大々的に行うことが憚られるようなこのタイミングで、舞台の良さを再認識してしまい、嬉しくもあり苦しくもあった。

鳥越裕貴さん

とりちゃんと菊池さんの女装、肌の面積が結構大きくて、特に菊池さんの方は筋肉質な腕が出ていてドキドキしましたね……。服装は女でもボディが男だな!って。とりちゃんはちょっとムチムチして見えて可愛かった。とりちゃん、なんであんなにムチッと見えたのかな……めっちゃ動ける子なのにな。

とりちゃんは文ステの敦くん(=若い)のイメージが強かったけれど、金太郎みたいなおっさんみたいな役が合ってて面白かった。なんだよあの髪型〜。パンフレットの金太郎はめっちゃかっこよかったよ!とりちゃんのひとり芝居のところが安定感があった。さすがとしか言えない。ひとり芝居で、観客の視線を釘付けにしていた。

金太郎とアイ子のシーン、泣いた。ただただしんどい。

スポンサーリンク

兒玉遥さん

水野朋子婦人警官は、声が前に飛んでこないタイプだな?と思ったけれど、後半のアイ子に泣いた。推しととりちゃんが前によく通る声質で、菊池さんはがなり声だけど聞こえる声だから、余計に水野婦人警官との差があったね。良いとかわるいとかではなく、差。

あの情緒不安定のジェットコースターすごい。アイ子のときはいつの間にか狂っていて、あんなにシームレスに狂気に移行することってある?と驚き。

パンフレットの紹介でアイドルだったと知って、ああ確かにすごい可愛いもんなあと思ったけど、この方も青春を何かに捧げてきた人なのかと考えてゾッとした。結末は全然違うにしても、本質的にはアイ子と同じなんじゃないか?

まとめ

この舞台は、新型コロナウイルスの影響で、公演途中で中止となってしまいました。私はたまたま2回観ることができましたが、東京公演の後半・大阪公演・福岡公演で観劇予定だった方のことを思うと残念でなりません。

こんな素晴らしい舞台を、推しは「観に来てください!」と大きな声で言えない状況だったのが辛い。本来なら「絶対に来て」「何度も観て」と言いたいだろうに、言えない。正直、どうして推しの主演の、演りたいと言っていたあの熱海の幕が上がる時期にこんなことになったのかと思ってしまう。試練すぎる。初日後にupされた動画で、無理せず来てくださいなんて言わせてしまって。推しは苦しんでたかなあと悩んでしまう。舞台はできるだけ多く、できれば最後まで走り抜けてほしいと思うけれど、幕が上がった公演数が増える度に、推しが糾弾される事態が起こる可能性が上がってしまって、今日や明日の幕が上がることを本当に願っていいのだろうかと考えてしまう。万が一に問題が起きたら、一番先に名前が出されるのは推しで、その事故ともいえる事態は、推しの俳優生命に影を落とすかもしれないと思うと、気が狂いそうになった。ただの俳優おたくでもこんな風になるんだから、当事者ど真ん中の推しは、大丈夫だっただろうか。舞台の後、寝る直前の布団の中、朝起きたとき、そういう不安に押しつぶされそうになっていたのだろうか。ともかく、公演時期が過ぎ去った今、集団感染が起きずに済みよかったなという気持ちです。

観劇への不安・公演の中止などがあったが、内容自体は素晴らしいものだった。こんな凄いものを魅せてくれて、推しを応援していて本当に良かったと心から思う。爆笑したしガチ泣きしたし、ドン引きしたし←、感情を振り回されっぱなしの2時間でした。

最近は感情をガチャガチャに乱されることってあまりなくて、良くも悪くも喜怒哀楽がさほどなく平凡な日々を送る中で、自分から感情を乱されにいって、それを楽しく感じ、喜んで、エンタメとして受け取るって、物凄い贅沢な趣味だって気付いた。観劇が趣味になるまではこんな世界は知らなかったし、連れ込んでくれた推しに感謝しています。

舞台上で木村伝兵衛部長刑事を演じる推しを観ていて「生き様」ってこういうことなんだなって感じた。演劇は生きている。また観たい。

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)